車両管理システムとは、会社の社有車を簡単に効率よく運行管理できるシステムのことです。車両管理システムを活用することで、位置情報や車両の状態などをリアルタイムで把握できます。車両管理システムには「位置情報の取得・走行記録の取得・到着時刻の予想・危険運転アラート通知・日報自動作成」など、便利機能が搭載されています。 しかし、導入にはそれなりのコストが必要となるため、対象となる事業者であればコストを軽減できる補助金を利用したいところです。本記事では、車両管理システム導入時に利用できるIT導入補助金について解説します。
2-1.通常枠(A・B類型)
2-2.セキュリティ対策推進枠
2-3.デジタル化基盤導入類型
3-1.中小企業・小規模事業者の場合
3-2.ITベンダー・サービス事業者の場合
車両管理システムを導入する際に、IT導入補助金を利用できる場合があります。IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者等の企業において、自社の課題やニーズに合った「ITツール」を導入する際の経費の一部を補助し企業での業務効率化や売上アップをサポートすることを目的としたものです。
ITツールの定義は幅が広く、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費、デジタル化基盤導入などが補助の対象となります。PC・タブレット・プリンター・スキャナーなどのハードウェアの購入費も補助の対象です(※デジタル化基盤導入類型の場合)
IT導入補助金の対象者も幅が広く、中小企業では「飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護・保育等のサービス業」に加えて、製造業や建設業なども対象となっています。
小規模事業者では「商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)」「サービス業のうち宿泊業・娯楽業」「製造業その他」に分類されています。
業種・組織形態 | 資本金 | 常勤従業員 |
製造業、建設業、運輸業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及び チューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 | 900人 |
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
※資本金・従業員規模の一方が、上記以下の場合対象(個人事業を含む)
業種・組織形態資本金常勤従業員
医療法人、社会福祉法人、学校法人 | - | 300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | - | 100人 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | - | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 | - | 主たる業種に記載の従業員規模 |
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | - | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特定非営利活動法人 | - | 主たる業種に記載の従業員規模 |
業種分類 | 常勤従業員 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
先に一覧表にまとめた事業に該当する事業者が補助対象となりますが、さらに次の要件も必要となります。
1:中小企業・小規模事業者等であること。
2:交付申請時点において、日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること)され、日本国内で事業を営む法人、又は個人であること。
3:交付申請の直近月において、申請者が営む事業場内最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること。
4:「gBizIDプライム」を取得していること。(「gBizIDプライムアカウント」を持っていない場合は「gBizID」ホームページからアカウントを取得する必要があります。)
5:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかの宣言を行うこと。
また、宣言内容の確認に際し、事務局が一部の交付申請情報を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)と共有することに同意すること。
6:交付申請に必要な情報を入力し、必要書類を必ず提出すること。
7:交付申請の際、1申請者につき、必ず申請者自身が管理する1つの携帯電話番号を登録すること(登録された携帯電話番号宛てにSMS にて、申請に必要なパスワード等の通知を行う)。また、登録された携帯電話番号に対し事務局からの連絡があった際には応じること。
8:国及び中小機構その他の独立行政法人の他の補助金等と重複する事業については、補助事業の対象として含んでいないこと。
9:IT導入支援事業者と確認を行ったうえで、インボイス制度への対応状況等に係る情報を事務局に報告すること。
10事務局に提出した情報は、事務局から国及び中小機構に報告するとともに、事務局、国及び中小機構(各機関から委託を受ける外部審査委員や業務の一部を請け負う専門業者等を含む)が以下の目的で利用することに同意すること。
11:事例の調査協力については、特段の事情がない限り協力をすること。(事例の公開内容及び範囲については、個別で随時合意を得るものとする)
12:事務局より付与される申請マイページを使用し本事業に係る申請、各種手続き等を行うため、申請マイページに係るログインID及びパスワードは、責任をもって適切に管理し、IT導入支援事業者を含む第三者に渡さないこと。
13:訴訟や法令遵守上において、補助事業の遂行に支障をきたすような問題を抱えていないこと。
14:中小機構が実施する補助事業において、「虚偽の申請」や「利害関係者への不当な利益配賦」といった不正な行為を行っていない(加担していない)こと。また、今後も不正な行為を行わない(加担しない)こと。
15:事務局及び中小機構は、交付申請や実績報告時において補助事業の適正な遂行のため必要があると認めたときは、交付規程第32条に基づく立入調査等を行うこととし、調査への協力を要請された場合は協力すること。協力しない場合は交付決定取消や補助金返還となることに同意すること。
16:中小機構が実施する補助事業において、「虚偽の申請」や「利害関係者への不当な利益配賦」といった不正な行為を行っていない(加担していない)こと。また、今後も不正な行為を行わない(加担しない)こと。
17:交付申請や実績報告時において補助事業の適正な遂行のため必要があると認めたときにおける、交付規程第32条に基づく事務局及び中小機構による立入調査等への協力を要請された場合は協力すること。協力しない場合は交付決定取消や補助金返還となる場合があることに同意すること。
18:補助金・中小企業庁の設置する各種相談窓口等で申請時・利用時・事業報告提出時等に提供された情報は、中小企業庁関連事業データ利活用ポリシーに則り、効果的な政策立案や経営支援等(申請者への各種情報提供、支援機関による個社情報閲覧等)のために、行政機関(中小企業庁・経済産業省)やその業務委託先、独立行政法人、大学その他の研究機関、施設等機関に提供・利用され、かつ、支援機関からのデータ開示依頼に対して申請者の承認があれば支援機関にも提供されることに同意すること。
19:中小企業庁が実施するデジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」における「みらデジ経営チェック」を交付申請前に行った事業者であること。(なお、本事業の申請に用いたgBizIDプライムを利用して事業者登録を行ったうえで、経営チェックを実施すること。)
補助対象となるITツールは、事業規模や経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを用意されたなかから選びます。
補助対象となるITツールはカテゴライズされていて、大分類と小分類で分けられています。
<通常枠 A・B類型の場合>
【大分類I ソフトウェア】
小分類:
カテゴリー1:単体ソフトウェア
【大分類II オプション】
小分類:
カテゴリー2:拡張機能
カテゴリー3:データ連携ツール
カテゴリー4:セキュリティ
【大分類III 役務】
小分類:
カテゴリー5:導入コンサルティング
カテゴリー6:導入設定・マニュアル作成・導入研修
カテゴリー7:保守サポート
<セキュリティ対策推進枠の場合>
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する
「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、本事業においてIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録されたサービス
<デジタル化基盤導入枠の場合>
【大分類I ソフトウェア】
小分類:
カテゴリー1:ソフトウェア
【大分類II オプション】
小分類:
カテゴリー2:機能拡張
カテゴリー3:データ連携ツール
カテゴリー4:セキュリティ
【大分類III 役務】
小分類:
カテゴリー5:導入コンサルティング
カテゴリー6:導入設定・マニュアル作成・導入研修
カテゴリー7:保守サポート
補助対象とならないITツールは、先に説明している「補助対象となるITツールの分類」に含まれないツールになります。ただし、ほとんどの業務に対応したツールが対象となっているので、求めるツールが対象分類に属していないことはほぼないでしょう。
ITツール導入に活用できる補助金は、通常枠(A・B類型)、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)の、2つの枠に分かれています。ここでは、それぞれの枠・類型の特徴を解説します。
通常枠(A・B類型)は従来から設定されていた補助枠です。自社の弱点を見つけ出し、ITツールを導入することで、業務の効率化や売上アップを図ることを目的としています。最大450万円の補助金を受け取れます。
・ポイント1:費用の2分の1で最大450万円が補助される
・ポイント2:さまざまな業種・組織形態に対応
・ポイント3:自社の課題にあったITツールが導入できる
・ポイント4:「IT導入支援事業者」が申請・手続きをサポート
近年増加するサイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約・価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減することを目的とした申請枠です。
・ポイント1:費用の2分の1で最大100万円が補助される
・ポイント2:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載のサービスのうち、IT導入支援事業者が提供、かつ事務局に事前登録されたサービスが対象となる。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)は、2022年から新規に設立された枠になります。デジタル化基盤導入類型の対象となるITツールは、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトです。また、クラウド利用料やPC・タブレット、レジ・券売機等のハードウェアの導入費用も補助対象です。インボイス制度も見据えて、企業間取引のデジタル化をサポートすることも目的の一つとして設立されました。ここでも、4つのポイントを挙げてみます。
・ポイント1:補助額5万円~50万円以下(補助率3/4)、補助額50万円超~350万円(補助率2/3)
・ポイント2:PC・タブレット等のハードウェアにかかる購入費用も補助対象
・ポイント3:会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに補助対象を特化
・ポイント4:クラウド利用料を最大2年分補助
デジタル化基盤導入類型では、レジ用のタブレット端末の購入やモバイルレジの購入もできて、売上計算するパソコンやPOSシステム、会計ソフトなどを揃えられます。現金のみでレジ清算を行なうことで、両替や現金管理による手間やリスクから、クレジットカードや電子マネーに対応した清算システムを構築できるため補助金を有効に活用できます。
ここでは、IT導入補助金の申請から手続きの流れまでを分かりやすく解説します。基本的にITツールを利用する側である「中小企業・小規模事業者等が行なう手続き」と、ITツールを提供する「ITベンダー・サービス事業者の手続き」の2つがあります。
ITツールを利用する側である、中小企業・小規模事業者の場合の流れは9ステップです。
ステップ1:IT導入補助事業についての理解
ここまで解説してきた内容を、理解することから始まります。
ステップ2:「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」(事前準備)
補助金の交付申請をする事前準備として、まずは自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定します。
ITツールの選定については「IT導入補助金2022」公式サイトの「IT導入支援事業者・ITツール検索(コンソーシアム含む)」から、条件を入力することで最適なITツールを見つけられるでしょう。
ステップ3:「gBizIDプライム」アカウントの取得、「SECURITY ACTION」の実施(申請要件)
交付申請には「gBizIDプライム」アカウント(ID・パスワードなど)が必要です。gBizIDプライムを持っていない場合は、「gBizID」ホームページより取得してください。アカウントID発行までは約2週間かかるため、期間に余裕をもって取得しておきましょう。
また、交付申請の要件には「gBizIDプライム」アカウント取得に加えて、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要になります。SECURITY ACTIONは、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかを宣言しないといけません。SECURITY ACTIONの手続きに従って、IT導入補助金の申請前に手続きを完了させておきます。
ステップ4: 交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
ステップ2で選定したIT導入支援事業者との間で、交付申請の事業計画を策定します。その後、次の流れで交付申請してください。これらの手続きは、全て「IT導入補助金2022」公式サイトの電子申請画面「申請マイページ」にて行ないます。
1:IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、代表者氏名等の申請者基本情報を入力する。
2:「申請マイページ」上で、申請に必要となる情報入力書および類添付する。
3:IT導入支援事業者にて、導入するITツール情報、事業計画値を入力する。
4:「申請マイページ」上で入力内容の最終確認後、申請に対して宣誓し事務局へ提出する。
ステップ5: 交付決定
事務局より「申請マイページ」を通じて、申請者へ交付決定が通知されます。同時に、IT導入支援事業者にも通知が届きます。
ステップ6: 補助事業の実施
「交付決定通知」受領後にIT導入支援事業者に報告し、補助事業開始です。交付決定前に契約・導入され発生した経費は、補助対象とはならないので先走りはNGです。各種手続きは全て「申請マイページ」にて行ないます。
ステップ7:事業実績報告
補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約、納品、支払いなどをしたことが分かる証憑を、次の流れで提出します。
1:中小企業・小規模事業者等の「申請マイページ」から、事業実績報告に必要な情報及び証憑を添付して、事業実績報告を作成する。
2:事業実績報告が作成された後、IT導入支援事業者が内容の確認及び必要情報の入力する。
3:最終確認後、中小企業・小規模事業者等によって、事務局に事業実績報告を提出する。
ステップ8:補助金交付手続き
事業実績報告が完了し補助金額が確定すると、「申請マイページ」で補助額を確認できるようになります。その内容を確認した後に、補助金が交付されます。
ステップ9:事業実施効果報告
事業実施効果報告は、定められた期限内に補助事業者が「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者が「IT事業者ポータル」から代理提出します。
注意点:IT導入補助金の交付申請のスケジュールは、2023年度は1次締切分が2023年4月25日、2次締切分が2023年6月2日となっています。2022年度は9次募集までの交付申請が可能でしたが、対象経費・補助額の変更により、早期終了が予測されます。詳しくはIT導入補助金公式ウェブサイトにて最新情報をご確認ください。
ITツールを提供する側であるITベンダー・サービス事業者の場合は、全部で8ステップです。
ステップ1:IT導入支援事業者としての登録申請
ITツールの提案・導入及び、これに要する各種申請等の手続きをサポートする者として、事務局に採択されたら「IT導入支援事業者」となります。そのための申請登録してください。
ステップ2:ITツールの登録
「IT導入補助金2022」公式サイトの「IT事業者ポータル」から、交付申請の対象となるITツールを登録します。IT導入補助金はIT導入支援事業者が登録申請し、事務局に登録されたもの以外には交付できません。
ステップ3:ITツールの提案
IT導入支援事業者として採択を受けた後、中小企業・小規模事業者に向けて、登録が完了したITツールを提案します。
ステップ4:交付申請
IT導入支援事業者と申請者(中小企業・小規模事業者等)の双方でやり取りを重ね、共同で申請内容を作成し、申請者より事務局へ提出されます。
ステップ5:契約・ITツールの納入
交付申請後、審査を経て、「IT事業者ポータル」にて、申請の採否(交付決定)の状況の確認ができるようになります。
交付決定済であることを確認した上で、補助事業(ITツールの受注・契約、納品等)開始です。交付決定日以前に、受注・契約、納品した場合は、補助金の対象とはならないので要注意です。
ステップ6:事業実績報告
補助事業が完了したら、ITツールの受注・契約、納品、支払い等が実際に行われたことが分かる証憑を、次の流れで提出します。
1:中小企業・小規模事業者等の「申請マイページ」から、事業実績報告に必要な情報及び証憑を添付、事業実績報告を作成する。
2:事業実績報告が作成された後、IT導入支援事業者が内容の確認及び必要情報の入力する。
3:最終確認後、中小企業・小規模事業者等によって、事務局に事業実績報告を提出する。
ステップ7:アフターフォロー
IT導入支援事業者は、中小企業・小規模事業者等へ納入した、ITツールなどについて継続的にアフターフォローします。
ステップ8:事業実施効果報告
事業実施効果報告は、定められた期限内に補助事業者が「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者が「IT事業者ポータル」から代理提出します。
今回は、車両管理システムの補助金に関するIT導入補助金を徹底解説してきました。車両管理システムを導入するなら、通常枠(A・B類型)を利用することとなります。
いずれにしても補助金は、事業を計画、実行して事業実績報告を行なった後、報告内容を確認してOKとなれば補助金が支払われます。先に入金される訳ではないので運転資金は必要です。
IT導入補助金を活用するなら、まずは「IT導入補助金2023」の公式サイトにて、IT導入支援事業者の選定とITツールの選択を行なう必要があります。IT導入支援事業者と相談しながら、良い事業計画を策定するようにしたいものですね。